大きなステップを踏み出した「高濃度乳房」

高濃度乳房とは

6月5日に厚生労働省で「がん検診のあり方に関する検討会」が実施されました。
マンモグラフィーでは、がんが見つけにくい「高濃度乳房」について、やっと受診者本人に通知するための体制づくりを進めるという方針が決まったようです。

この「高濃度乳房」とは、乳房を構成する脂肪の割合により、4タイプに分け、脂肪の割合が低く、乳腺組織が多く白く映る下図の右2タイプのことを指し、マンモグラフィーの感度が低く、それ故、がん発見率が低くなる、また、乳がん罹患のリスクも高いということがわかっており、かねてより問題となっていました。

日本人は、この高濃度乳房の割合が高いとも言われています。

下記サイトで「高濃度乳房」について詳しく知ることができます。
https://medicalnote.jp/contents/170419-001-LG

 

「高濃度乳房」驚くべき事実

私がこの「高濃度乳房」について初めて知った動画を紹介します。
2010年に発表されたこの動画は21分と少し長いのですが、驚くべき事実が語られていました。

デボラ・ローズ乳腺腫瘍を3倍も発見できるツール、そしてそれを一般に使用できない理由

| TED Talk | TED.com
https://www.ted.com/talks/deborah_rhodes?language=ja

この動画発表から、7年の時が経ち、やっと日本でも本人に通知しようという方針が決定しました。
この方針決定までには、紆余曲折を辿っており、その議論内容は、決して、当事者である女性の全てが納得できるものではなかったと思っています。

これまで、高濃度乳房の問題については、国も医師達も理解していたけれど、下記の理由等により、本人通知を時期尚早としていました。

・高濃度乳房は、乳房の構成であり、疾病ではない。

・上記理由により「要精密検査」と判定することはできない。

・また、その後の追加検査については、保険診療が認められない

・超音波検診を実施する技師の不足

要は、健康診断で行われるマンモグラフィー検診の目的は、乳がん死亡率の低減をめざした公共施策であるため、病気でない「高濃度乳房」を本人に伝える義務はなく、また、病気でないため追加での超音波検診に保険が適用されない、十分な検査技師も現状確保できておらず、対応ができない

などの理由で、国は、高濃度乳房判定をマンモグラフィーの検診項目にいれず、本人告知の必要もなしという方針を取り続けていました。

この本末転倒のような対応にずっと不信感を抱いていました。

 

マンモグラフィーでの感度が低い「高濃度乳房」

マンモグラフィー検診は、その検査時の痛みや、被ばくの高リスクもあり、自分の乳房が、マンモグラフィーでの感度が低い「高濃度乳房」であると知った後も、果たしてマンモグラフィー検診のみを、選択し続ける女性はいるのでしょうか?

むしろ国の施策であるがん死亡率を低くするということであれば、マンモグラフィ―ではなく、もしくはプラスして超音波検診などを高濃度乳房であると知った女性は、積極的に自らが選択するはずで、そしてそれが、がん死亡率低減に結びついていくことにもなったはずです。

乳がん家系と言われる女性が、高濃度乳房だとわかっても自費での超音波検診などを節約したり、国の施策に不公平感を持ったりするのでしょうか?

むしろどうして、高濃度乳房の感度が低いとわかっているマンモグラフィーを国が推奨し続けるのでしょうか?

本人通知にて、マンモグラフィー検診の受診率が減るという懸念についても議論の遡上に挙がっていましたが、減った分は、超音波検診に流れるはずで、マンモグラフィー検診の受診率低下ということを問題視する方が、大問題です!そこに重大な利益相反が存在しているのではないかと疑いたくなります。

よく毎年きちんと乳がん検診を受診していたにもかかわらず、乳がんと告知され、告知された時には、かなり症状が進んでいたという話を聞きますが、国の対応の遅れが原因のひとつとなっていたのではないでしょうか?

乳がんは、女性のがん罹患率では、2012年1位のがんとなっていますが、2014年死亡率トップは、大腸がんで、乳がんは第4位です。

(地域がん登録全国推計によるがん罹患データ )

 

(人口動態統計によるがん死亡データより)

これは、乳がんは早期発見で、適切な治療により助かる可能性が高い、死に至らないがんであるということです。

高濃度乳房であっても、マンモグラフィー検診に乳房超音波検診を追加することで、がん発見率が上昇するという結果が、「J-START-乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」より得られています。

j-start.org

 

マンモグラフィー検診に乳房超音波検診を追加

高濃度乳房への追加での超音波検査体制が、熟練した技師の確保が十分ではないとの受け皿側の問題によって、本人に通知しないことが唯一の正しい選択だったのでしょうか?

では、マンモグラフィーの熟練した技師の確保が、現在出来ているのでしょうか?

マンモグラフィー画像の判定には、かなりの技量が要求されますが、技師や医師個人の主観が介入していない正しい判定を皆が一律にできているという保証ができているのでしょうか?

ガイドライン等による判定基準はあっても、全てがそのガイドラインで網羅されているとは決してないはずです。

高濃度乳房への説明が十分でない中での本人への通知では、精神的負担が大きいという意見もありましたが、説明が出来ないのは誰なのでしょうか?医師達ではありませんか?

私たちの責任ですか?

高濃度乳房が疾病ではなく、乳房の個性ということであれば、それは個人に属する情報であり、その個人的な情報を第三者である医療従事者だけが持ち、本人には渡されないという状況が正常なのでしょうか?

高濃度乳房であると聞いてしまった後で「知らなければよかった」と後悔する人がいるでしょうか?

乳がん罹患リスクが高い高濃度乳房であると通知された時の恐怖感や絶望感、喪失感は、もちろん女性であれば想像できますが、決して一生知らずに過ごしたかったという類の情報ではありません。
この度の方針決定は本当によかったと思いました。
今後の早急な本人通知に対する体制の構築を切に願うばかりです。

以前ご紹介した 「第3期のがん対策推進基本計画案」にて、これまで達成できなかった死亡率減少目標の反省から(結局目標に掲げられた数値は一度も達成されることなく)、予防にシフトされ、この度の高濃度乳房の受診者への通知体制構築に繋がっていったのだと思います。

3月に実施されたこの検討会では、本人通知は時期尚早であると言われていましたが、この6月の検討会にて、本人通知へと方針が一気にシフトされています。
3月の検討会では、230の市町村では既に本人に「高濃度乳房」について通知されている現状や、その半数の115の市町村で、高濃度乳房の対応として、超音波検査の受診や、精密検査の受診などの推奨や補助を実施していることが報告されていました。

私が住んでいる市の役所に問い合わせをしてみました。
残念ながら、この230の市町村には含まれてはおらず、下記の回答が得られました。
「国の指針および当県の乳がん検診ガイドラインに基づく結果報告項目に含まれていないため、現在のところ実施していません。
ただし、市内契約医療機関での個別検診及び集団検診いずれの場合も、本人から希望があった際は、乳房の構成について回答させていただいており、国の指針および当県乳がん検診ガイドラインに位置づけられ次第、対応していきます。
現在のところは判定医の判断により、必要に応じて精密検査をご案内させていただいております。」

40才以上の方で、マンモグラフィー検診を受ける方は、ぜひ、乳房構成について先生に訊ねてみてください。
ただ、「医師の手に勝る診断はない。」ということも、しっかり心に刻み、忘れないでください。
これは、乳がんの名医と言われるご高名な先生が本音として語ってくださった言葉です。
この言葉の重みをまさしく表現した動画があります。
お時間があれば、ぜひ、ご覧ください。
エイブラハム・バルギーズ:医師の手が持つ力 | TED Talk | TED.com

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